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なっとくの線形代数
{ 高校数学→大学数学 (→大学院)} ⊃ { 線形代数の本質・全体像 }
高校数学αなっとくの 線形代数

いまの大学低年次教育に求められていた text,
数学者がなかなか書くことができない,多くの大学生の親しめる text
と思います.
 新しい概念や数学的な方法が生まれる歴史の話,
個別の例の中に含まれる一般性,など,
よく工夫されているので,
経済系の学生にも読み易く,大いに助けになるに違いありません.
( from 恩師 F 先生の寸評 )

■ 読者のためのガイド:

・ 線形代数を初めて学ぶ学生が,容易に単位を取れるだけでなく,楽しく学べて,なっとく しながら線形代数の本質が理解できることを念頭に置いて書かれた参考書です.全体像がイメージできたとき,人は‘なっとく’できます.その詳しい解説(公式見解)と全体の内容は 始めにhtml)(PDF)と 目次html)(PDF) および 索引(以下 PDF )を見てもらうことにして,ここでは,「なっとくの線形代数」の工夫の跡を実際のページの抜粋を見ながら実感してもらいたいと思います.(出版本のため印刷不可 <(_ _)> ).

  ・ 線形代数は 高校で習った関数 を一般化して得られる写像の概念(→ 関数概念の一般化 )が元になっていますので,この書は高校の関数から入ります.3角関数もちゃんと復習 し,加法定理から得られる和積・積和公式に親しめるように,AM 放送の仕組みなどに触れます(→ 1.4.4.3 AM 放送 ).指数・対数関数の改良版 や 複素数の改良版 も載せてありますから,ご心配なく.オイラーの公式 cosx +i sinx = eix の 初等的だが,指数法則を考慮した,なっとくの導出も載っています(→ 2.4.3 オイラーの公式 )(←ミスのため,全面改訂いたしました).

  ・ 線形写像の形式的な定義は 1.7.3 線形写像 でされていますが,それが行列と結びつく部分は1次方程式と密接に関連しています.本書では,分かり易くなるよう,具体例を用いて議論しています(→ 5.2.5 1次方程式と線形写像 ).“線形”と呼ぶ理由もそこで明確にわかるでしょう.

・ ベクトル・行列については 高校数学の範囲平面ベクトル空間ベクトル行列と線形変換 )も全て扱い,大学の範囲にスムーズに繋(つな)がるようにしてあります(→ 第6章 行列と線形変換 ).大学で扱う行列は一般の m×n 型であり,一般の 正方行列の逆行列を議論するには,悪名高い‘一般次数の行列式’に面と向かわないとなりません.そんな行列式の定義には,現れる項の符号を定めるために,ウンザリする「置換」の議論が欠かせません.本書では,置換を阿弥陀籤(あみだくじ)の理論に結びつけ,たのしく なっとく できるものにしています(→ 1.7.2 置換 ).実際,‘一般次数の行列式’の定義では,阿弥陀籤は救いの神です(→ 6.3.3 行列式の再定義と高次の行列式 ).
あみだくじによる「偶置換・奇置換の一意性定理」の証明について.検索中にたまたま,『数学的ひらめき』(芳沢光雄 著,光文社新書,2006年)にそんな証明が載っていることを知り,急ぎ購入しました.同じような証明なら,パクッタと言われかねないと心配したが,芳沢教授のものはあみだくじの「H路」(=隣接互換)を直接用いたせいもあり,「置換線」を用いた私のもの とは外見上全く異なっています.また,教授はそれを恒等置換に適用しており,一般の置換で議論した私とは違います.なお,教授はそのアイデアを用いた証明論文を日本数学会誌「数学」58巻秋季号に掲載なされたそうです.ただし,あみだくじそのものの表現は用いていないそうです.これは,あみだくじの良さを広く知ってもらうという観点からは,まことに勿体ない話です.置換の理論はあみだくじの理論に完全に取り込まれるということですから,数学科の人が卒業論文(修士論文も可か?)などにして学術誌に投稿されることを切に望みます.(私自身は,今となっては,そのことに興味はありません).

・ 外積は『高校数学+α』のもの( 空間ベクトル )に手を加え(→ 4.3.4 外積 ),3次の行列式の導入に用いています(→ 6.3.1 3元連立1次方程式と3次の行列式 ).

・ 行列 A の逆行列 A-1 は性質 AA-1=I および A-1A=I の両方を満たす(ただ1つの)行列として定義されますね.n 次の行列では片方の性質を満たせばよいことはよく知られた定理ですが,それを示すのは初学者にとっては難問です.本書では,まず A-1 の候補を初等的に求め,次に行列式の性質を初等的だが巧妙に用いて,その候補が両方の性質を満たすことを示します(→ 6.3.3.3 高次行列の逆行列 ).

  ・ 行列の応用は連立方程式の解法(→ §6.4 連立1 次方程式と掃き出し法 (行列の階数(ランク)を含む))と固有値問題(行列の対角化)(→ 第7章 固有値と固有ベクトル )に大別されますが,後者は初学者にとって大きな壁になっています.本書では,対角化の方法とイメージに徐々になれていくように,例題を用いた繰り返しの方法を採り,経済系の学生も興味をもつ例題を用意しています(→ 7.2.3 マルコフ過程 7.2.3.1 ビール業界のシェア争い ).
・固有値が重解になるときは,対角化ができる場合とできない場合があります.後者の場合は「ジョルダン標準形」についての本格的な理論考察をする必要があり,それは初学者にはレベルが高すぎます.ただし,結果として得られる計算の処方箋は簡単なので,ここではその処方箋を扱う例題を取り上げて満足します(→ 7.2.3.2 固有値が重解の場合の対角化 ).
・ 本格的な固有値問題の応用に備えて,線形微分方程式の固有値問題も取り上げています(→ §7.3 線形微分方程式と固有値 ).ちょっと脱線して,LCR 交流回路も取り上げていますね.なぜ「複素電流」を考えるか,なぜ「複素インピーダンス」が必要かを解説し,LC 回路で起こる 共振(同調)が先に述べた AM 放送の受信原理であることも解説しています.

・ 理論的に重要な「基底」については関係する多くの箇所で議論されています: (1) 線形独立や斜交座標との関係で,(2) ベクトル空間の次元との関係や関数空間の基底として,(3) 同次線形方程式・同次連立1次方程式の解空間の基底として,(4) 固有ベクトルとの関係において,(5) フーリエ級数における固有関数との関係において

・ 初学者にとっての最大の難問は“線形代数とは何なのか,線形代数をなぜ学ぶのか!?”ということでしょう.共立出版の 私のよきパートナーも強調 しているように,本書はその答えがかいま見られるように配慮しています.「第 5 章 ベクトルの公理的議論」がそれに当たり,その1応用例が 波動方程式(弦の振動方程式)のフーリエ級数解 です.‘やっていることの意味がわかること’は やる気を奮起し,大きな励みになります.君たちの健闘を祈ります.

m(_ _)m ミスがありました:訂正表

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