Upconv で CD のハイレゾ化/アップコンバートを行うようになってから,市販のハイレゾ音源を時々購入している.それらの「ハイレゾ音源」については賛否両論があるようである.今回は,ハイレゾ音源についての議論を調べ,実際に音を聞いて判断し,最後に Upconv の役割を議論しよう.
今回は,ハイレゾ音源をお持ちの皆さんが自分自身で検証することを念頭に置いて書くことにしました.「ハイレゾ/アップコンバート 情報掲示板」への報告も期待しています.
始めに予備知識を.
CD の場合:1秒間に44100回記録しているから,1秒/44100≒0.000023秒=0.023ミリ秒 に1回記録している.また,16bit だから,音の大きさを216 段階に分けている.1bit 違うと音量が2倍違う(=6dB 違う)ので,最高と最低の音量の差は 6dB×16=96dB 違う.人間の聴覚は120dB の違いを聞き分けられるというので,120/6=20bit まで上げるのは意味がある.
- サンプリング周波数(Hz:ヘルツ) :
- アナログ信号からデジタル信号への変換をA/D変換といいますが,その時のデータをサンプリングする(=一定の間隔で測定する)時間間隔を ‘サンプリング周期(秒)’ といい,その逆数が ‘サンプリング周波数(Hz)’ です.
CD のサンプリング周波数 44.1kHz の場合、1秒間に44100回記録している。
※ 半分の 22.05kHz までの音が聞ける(標本化定理).
- 量子化ビット数(bit:ビット):
- アナログ信号からデジタル信号へのA/D変換の際に,信号(今の場合 音)の大きさを何段階に分割したかを表す数値です.この値が高いほど,元の信号により近いデータが得られます.
CD の量子化ビット数 16bit の場合、216=65536段階で記録している。
実際の録音を調べてみよう.
「マイク ハイレゾ 録音」で検索すると,トップ項目にリニアPCM 192kHz/24bitのハイレゾ録音再生に対応するマイクが出てくる.
新開発 大口径15mmの単一指向性マイクユニットを搭載40kHz の音源も集音できるので,40kHz×2=80kHz 以上のサンプリング周波数なら正しく録音できる.96kHz なら十分である.これが最先端のマイクなのかな.発売は2013年11月となっている.
新開発のマイクユニットでは約 -31dB/Pa(1kHz)の高感度を実現。さらに、マイク部品の取り付け位置や開口部など細部にわたる設計を施し、マイク内部の空間を最適な状態にしました。この結果、周波数特性は40kHz近くまで広がり、伸びのある低域やバイオリンの倍音を含む高域の音源も豊かに録音できます。
リマスタリングしてハイレゾ化というのもある.昔の録音はどうなのだろう.
アナログのオープンテープやレコード盤は ノイズを考慮した S/N比 でデシベルが求められるようです.
オープンテープ 60dB ,レコード盤 50dB ,カセットテープ 40dBマスターテープもオープンテープだから,60dB/6dB=10bit しかないぞ.これをリマスタリングしてどうやって 24bit にハイレゾ化するのだ.多くのテープをミキシングしてやるのだろうがそうは簡単ではなさそうだ.現在では,デジタル・リマスターによって CD の音質を改良する技術も発達している.
以上の考察から,昔売り出された楽曲のハイレゾ化はハードルが高いということを念頭に置いて,市販のハイレゾ音源の実情を調べ,「ハイレゾ」の本質を探ろう.
先ずは,ハイレゾ音源に対する注意から.
・・・「ハイレゾだから音が良い」というのは誤解で、最近はインターネット上では「高いお金を出してハイレゾ再生機器と音源を買ったのに、CDとさほど変わらない」「ニセレゾ」などという声もよく目にする。・・・人の聴覚能力の限界から,ハイレゾは「バカげている」という議論もあります.
ハイレゾ音源を手に入れるには、ハイレゾ配信サイトから楽曲を購入し、ダウンロードして再生する。日本では、オンキヨーの「e-onkyo music」や、ソニーの「mora」が有名だ。「OTOTOY」,「レコチョク」,「mysound」,「groovers」もある.また、海外ではアメリカの「HDtracks」が最大手だ。・・・
しかし、ここで注意したいのが、ハイレゾ音源はスタジオにおいて録音からマスタリングまで一貫してハイレゾスペックで作業されたものとは限らないという点だ。配信サイトを覗いてみると、1950~80年代というまだ音楽CDが世に普及していない時代、つまり、LPレコードの時代に録音されたタイトルが数多く並んでいることに気づく。・・・
ハイレゾ音源には、おおまかに分類すると以下の種類がある。
(1)レコーディングからミキシング、マスタリングまですべてハイレゾで行われたもの
(2)ハイレゾ以外の音源を含めてミキシング/ハイレゾマスタリングしたもの
(3)非ハイレゾの原盤をリマスターしたものをハイレゾマスタリングしたもの
これらの中でネイティブなハイレゾ音源と言えるのは(1)だけで、それ以外は、元々ハイレゾではない音源をスペックアップしてハイレゾと称しているのだ。・・・
「リマスター版=ニセのハイレゾ」と断定しているのではない。・・・過去に作成されたLP盤のCD化や、一旦廃盤にしたものを再発売した時に、リマスターをそのままアップコンバートしたものがあるため、CDと音質が変わらないものがあるということだ。・・・ 特に「HDtracks」では、買ってから「CDを単にアップサンプリングしただけ」と明らかにわかるものがあり、・・・。
しかし、リマスターといっても、高度な技術で古い録音をハイレゾにふさわしい音にチューニングしているものも増えてきた。例えば、ビクターでは「K2HD」という独自技術を使って、オリジナル版の高音質化を図っている。単にアップサンプリングしてスペックだけハイレゾにしているのではなく、古い名作を新たによみがえらせるという意義はあるだろう。(※「K2HD」については後ほど詳しく議論しましょう).
・・・ラウドネス曲線。「聴こえない」限界と「これ以上は痛い」ラインが赤線で描かれている。 「可視光線」特に緑色の光線が敏感に認知できるのと同様、「可聴音」についても敏感に認知できる周波数がある。しかしながら、人によって違うが、 16-20kHz 以上はどれ程大きい音でも認知することは絶対に無理である。・・・
逆に,「ハイレゾはなぜ音がいいのか? 聴こえない心地よさの秘密」という主張もあります.
・・・ CDはよく言えば、表現はさまざまですが「シャキッ」とするというか「カリッ」とするというか「カチッ」というか……、そういう印象です。逆に「硬めである」とか、「しなかやさに欠ける」とか、「薄味」とかそういう印象を持つ人もいるかもしれません。耳だけではなく,身体全体で“超音波”を感じ取るということらしい.ただし,普通の音楽とは違うもののようだ.
これが96kHz、さらに192kHzになると、よりなめらかで粒子がきめ細かくなって、単なる音色そのものの違いだけでなく、“空気感”も出てくるわけです。・・・
山城先生は脳科学者で、筑波大学の先生をされていて、“ハイパーソニック”という、まさに“ハイレゾ”のさきがけとなった概念を、1980年代の半ばにいち早く提唱された方です。 先生が主催している芸能山城組は、太鼓あり、踊りありでアジアの芸能をコーラスでやるものです。1970年代にそのレコードがたくさん出て、芸能山城組のレコードは音がいいと評判になりました。実はそのレコードに、先生はある細工をしていました。
実は50kHzぐらいのところに強調するような音を入れていたんですね。
そうすることで、先生の表現を借りるなら、“玄妙な音”になるというわけ。おそらく「音のメリハリが利いて、切れ味がよくクリアになっていく」と言いたいのだと思います。そして実際にアナログ時代、芸能山城組の音は不思議に音がいいねっと言われていました。
準備はこれくらいで良いでしょう.それではハイレゾ音源の検証に移りましょう.
1.ハイレゾ音 出力の確認
パソコンからハイレゾ音を出力しているつもりで,実は FMラジオレベルの音質だったでは困ります.確認しておきましょう.(以下,OS は Windows 用の解説です.他の OS の方は各自で調べてください).
タスクバーの音声ボタンを右クリック→再生デバイス(P) または コントロールパネル(P) の サウンド をクリックする.ハイレゾ音源を奏でると出力しているデバイスからスピーカーアイコンが表示され,ピコピコ変化します.(私の場合は AMD HDMI Output).そのデバイスを右クリック→プロパティ(P)→詳細.規定の形式 の 共有モードで使用されるサンプルレートとビットの深さを選択します。で 24ビット、96000 Hz(スタジオの音質) またはそれ以上の音質を選ぶ.テスト(T) をクリックして実際に音が出ていることを確認する.ただし,スピーカーからハイレゾ音が実際に出ているかどうかは各自で確認してください.もし,16ビット、44100 Hz(CD の音質)と比較して音が変わらなければ,あなたの音響システムはハイレゾに対応していない可能性があります.
2.WaveSpectra と EcoDecoTooL のダウンロード
ハイレゾ音源のスペクトル表示(周波数表示) およびそのピークの表示に WaveSpectra は欠かせません.WaveSpectra では,赤い線の Peak スペクトル(各周波数において,各瞬間の音量の最大値を曲の始めから全部表示したもの)も重要です.WaveSpectra画面左下の Peak 欄を(長めに)クリックして表すようにしましょう.WAV ファイルを WaveSpectra で奏でるには,ファイル('s)を WaveSpectra画面にドラッグする,または WAV ファイルを WaveSpectra に関連付けておく( WAV ファイルをクリック→プロパティ(R)→プログラム:の右にある 変更(C) をクリック→WaveSpectra を(探して)選ぶ).※ 曲を奏でる際は,WaveSpectra画面の上部にある Wave: 欄の・・・Hz ・・bit 2ch でサンプル周波数と量子化ビット数を確認する.
また,Upconv のためにファイルを WAV で統一し,サンプルレートとビットレートを変えたファイルを作るために,EcoDecoTooL が便利です.必ず使いこなせるようにしておきましょう.FLAC 形式のハイレゾ音源をダウンロードした場合には,EcoDecoTooL を立ち上げ,出力:wav ,wav 出力 は 入力と同じ音質 にチェック,出力の音量設定 は 指定した音量(89.0 dB)で統一,出力先フォルダ は(慣れるまで)入力と同じフォルダ にチェックを入れて,FLAC ファイルをEcoDecoTooL画面にドラッグすると WAV に変換される.WAV ファイルは,曲名が abc だとすると,「ハイレゾ実験--abc--」名のサブフォルダを作って,そこに移動しておくと,後の処理や整理がし易いでしょう.
これで準備は整いました.
3.ハイレゾ音源の検証1―タイプ1―
2000年以前にリリースされた,またはその後リマスター盤がリリースされたハイレゾ音源についての検証です.右図の ハイレゾ音源 タイプ1は,WAV ファイルが 96kHz/24bit で,WaveSpectra で奏でたとき,Peak スペクトルの振動が明らかに 30kHz 以上まで続いているものです(例えば,昔うっとりしながら聴いていた こちら).当時のものをこのようにハイレゾ化するには,マスター音源からデジタル処理してノイズを取り除き,Upconv と同様にアップコンバートするしかありません.たぶん,CD の音質よりは良いというのが売りなのでしょう.それを確かめてみましょう.ファイル名を SH.wav として EcoDecoTooL にかけます.EcoDecoTooL 設定画面で,音質を指定 にチェックをいれて,その右の □ をクリックし,周波数:48,000Hz,ビット数:24bit を選んで OK をクリックする.SH.wav をドラッグすると,(出力先フォルダ=入力フォルダとして) SH_.wav が戻ってくる.ファイル名を SH_(48kHz,24bit).wav と変えておこう.同様にして,SH.wav から SH_(44.1kHz,24bit).wav,SH_(44.1kHz,16bit).wav(=CD 音質ファイル)を作って違いを聞き分けられるかをチェックしよう.これらのどれかを聞いた後に SH.wav を聞くと調べやすい.さあ,どうでしたか.私の場合は,SH_(44.1kHz,16bit).wav と SH_.wav は僅かに違うかなという程度でした(私の聴力は Hearing Test HD で 12~13kHz 位).SH_(44.1kHz,16bit).wav は CD マスター レベルの音質です.参考のために これを Upconv でアプコンバートしてみましょう.設定は HFC(Auto)_DL(0)_NR(100Hz,L2)_LPf( kHz) で出力は 96kHz/24bit です.そのファイルを SH_Upcv_(44.1→96kHz,16→24bit)_HFC(Auto).wav としてSH.wav と比較してみましょう.あらら,Upconv コンバートの方がノイズが少ないぞ.
4.ハイレゾ音源の検証2―タイプ2―
右図の ハイレゾ音源 タイプ2 は 1982年発売の世界的大ヒットアルバムのハイレゾ版です.元の版元は HDtracks です.WaveSpectra からも分かるように,なんと 176.4kHz/24bit までハイレゾ化されていますが,Ⓟ 1982 ですから,間違いなくアップコンバートされています.検証1と同様に CD 音質ファイルを作って聞き比べてみたが,殆ど違いは分かりませんでした.持ち合わせていた CD アルバムから の WAV ファイル(44.1kHz/16bit)を Upconv でアップコンバートしたら,ハイレゾ音源よりノイズが少ない分聞き易いように感じました.
5.ハイレゾ音源の検証3―タイプ3(K2HD)―
右図の ハイレゾ音源 タイプ3 はK2HDプロマスタリング という技術を用いたもので,タイプ1,2音源より遥かに音質が良くなっています(音源はこちらから).その本質は,非常に分かりにくいが,CD レベルの音質(44.1kHz/16bit)を,倍音を考慮することで一旦 192kHz/24bit にアップコンバートして,その際,K2HDコーディング(Coding) なる技術を使うそうです.それは,「20kHz以上の高調波成分を、音楽信号成分と音楽エネルギーが等価になるように、基本波の成分に演算処理を行う」という,よく分からんが,要するに 20kHz未満にある基音(←CD だから 16bit である) (および,20kHz以下にある倍音)を 24bit に補正するらしい(素人向けの解説は反って分かりにくい).その後,20kHz 以上の(人工的な)倍音を消して,44.1kHz/24bit にダウンサンプリングする.24bit なのでハイレゾ(=高音質)音源ではある.最後に,(20kHz辺りからディザ・ノイズを付け加えて?)96kHz/24bit にアップコンバートする(単に,ハイレゾ音源として売り出すための処理のようだ.K2HD の技術者は 44.1kHz/24bit で十分との確信があるとみられる).20kHz以上の倍音を消してしまうので,誤解を生む元になっています(確かに,20kHz 辺りからの Peak スペクトルには実音(=歌声/楽器の音)は入っていません).
解説に手間取ったが,先に進もう.タイプ3音源(96kHz/24bit)は実質的に 44.1kHz/24bit であることは EcoDecoTooL を用いて確かめられます.K2HD音源をお持ちの皆さんは多いでしょうから,各自,音を比較して見ましょう.ただし,20kHz以上でもスペクトルの振動が完全には0ではないので,ランダムなディザ・ノイズは存在します.高音に敏感な方はこの音(Upconc の解説によると“アナログぽい感じ”)を感じ取って,違いが分かるかも知れません.
次に,44.1kHz/16bit(CD 音質)と 44.1kHz/24bit の比較です.各自でお願いしますが,私の検証では,音量を上げると,明確にとは言えないが,(バックの演奏で)ある程度の違いが感じられました.これはタイプ3音源が確かに 24bit であることを示しています.
さて,Upconv との比較です.44.1kHz/16bit(CD 音質)をアップコンバートすると,ややや,ハイレゾ音源96kHz/24bit といい線を行っているように感じました.調子に乗って,Upconv で タイプ3ハイレゾ音源→96kHz/24bit のアップコンバートをしてみました(設定は HFC(Auto)_DL(0)_NR(100Hz,L2)_LPf( kHz) ).右図の Upconv:タイプ3→96kHz/24bit にその結果のスペクトルが表示されています.大音量で奏でてみると(6畳間という制限ですが),Upconv ハイレゾ化の方が音割れに強いと感じました.これは,私が購入した タイプ3ハイレゾ音源 にはまだ取り切れていないノイズが含まれており,それを Upconv の NR(100Hz,L2) 設定がさらに軽減したと解釈できます.つまり, Upconv で変換した方が S/N比 が高いファイルになったことを示しています.Upconv 変換が “原音を変えてしまう” 危険性はあると思いますが,何といっても音がいいという魅力は捨てがたいものがあり,これは好みの問題といえるでしょう.皆さんも検証してみてください.
6.ハイレゾ音源の検証4―タイプ4― 追記:2017/07/03
タイプ3(K2HD) と同程度によい音質のハイレゾ音源がありました(←彼女は,ヒット曲があと2曲あれば,大歌手の仲間入りができた実力者です.惜しい人です).(こちらにハイレゾ化の記事があります↓).
【オリジナル発売日:1978年5月21日】ずいぶん昔に発売されたにも拘わらず,質のよいアナログ・マスター・テープが残っていたとみえて,リマスタリングが成功したものと思われます.K2HD と違って,超高音域の倍音がよく見えているので,誤解を受けることも無いようです. ハイレゾ音源 WAV ファイル(96kHz,24bit)を KT.wav として,EcoDecoTooL を用いて,例によって KT(44.1kHz,24bit).wav と KT(44.1kHz,16bit).wav を作り,聴き比べてみましょう.24bit の方が音が滑らか/柔らかで高音質になっています. KT(44.1kHz,24bit) とハイレゾ音源(96kHz,24bit) の区別は(私には)つきませんでした.Upconv を用いて,KT(44.1kHz,16bit).wav から KT(96kHz,24bit).wav を作り,ハイレゾ音源(96kHz,24bit) と聴き比べて見ると,ハイレゾ音源の方が良い音でした.これは,KT(96kHz,24bit) は,HFC 以下の可聴域で,16bit のままであるからと思われます.KT(44.1kHz,24bit).wav を Upconv で ハイレゾ化して KT(44.1→96kHz,24bit).wav を作ると,ハイレゾ音源(96kHz,24bit).wav に含まれていたヒスノイズが取り除かれたものとみえて,音質がよりクリアになったように感じました.リマスタリングの際に Upconv の ノイズリダクションNR 機能はかなり役立つように思われます.
※全曲オリジナル・アナログ・トラックダウン・マスター・テープからハイレゾ配信用にリマスタリングした商品です。
7.Upconv の ノイズリダクションNR 機能
タイプ3,4ハイレゾ音源のところで,16bit と 24bit は聞き分けられる.しかしながら,多くの人にとって,96kHz と 44.1kHz の違いは感じ取れないという議論をしました.自分としても,何ヵ月もかけて Upconv で 96kHz/24bit にアップコンバートした曲が 44.1kHz/24bit にダウンサンプリングしても,音質の違いを感じ取れない聴力にガッカリしています.HDD に空きが少なくなってきたら,44.1kHz/24bit には抵抗があるので,48kHz/24bit にダウンサンプリングして保存することにします(^^;;).
さて,本題です.Upconv のノイズリダクションNR 機能が重要な役割を果たしていることを見ました.タイプ3,4ハイレゾ音源でもかなりの程度にノイズが取り除かれているのを見ました.ノイズについて立ち入った議論をしましょう.
音楽ファイルに入るノイズは大別して2種類あるようだ.右の画面の左側のクリックノイズは,“パチッ”というごく短いノイズで,CD の傷とか,(レコード盤をマスターにしたときには)レコード盤の音溝についた塵や盤面の小さな傷に因るものです.継続時間は1周期と短く,EAC で見たように比較的取り除きやすいノイズです.右側のヒスノイズは,アナログ・マスターテープを使うことで生じるノイズで,“シー”という微弱なホワイトノイズに似たノイズが音声データの全長にわたって生じています.ヒスノイズはある程度取り除くことは可能ですが,音声信号にまで影響をあたえるため,過度の除去は音質を劣化させることになります.
問題はアナログ・マスターテープを使っていた古い曲のヒスノイズのようである.タイプ1,2のハイレゾ音源ではこれを除去できずにいたようだ.タイプ3ハイレゾ音源では K2HDコーディング という処理を行う段階で,意識的にヒスノイズを取り除く処理を加えたと思われる.デジタル・レコーディングを行う現在では,K2HD マスタリングにはヒスノイズが入る余地はなくなり,ほぼ完璧なハイレゾ音源が作れると思う.
にもかかわらず,ヒスノイズ除去技術は依然重要だ.何故って,いい音で聞きたいヒット曲の 99%(以上?)は昔の曲だからだ.自分は エルビス・プレスリー(1935-1977)のコンサートを最前列で聴きたいと夢見る.
Upconv のノイズリダクションNR を見てみよう.
■ ノイズリダクション:(1000Hz以上)この解説からことの本質が読み取れる.Upconv は倍音を生成できる,ということは,基音を特定できる.「基音は実音(=歌声/楽器の音)なので,何周期も繰り返す」という事実を利用したに違いない.周期 T[sec] と周波数 f[Hz] の関係は逆数の関係:T=1/f にあるので,実音の判定には,「一定期間」を低周波では長く取り,高周波では短く取れば済む.たぶん「一定期間」を ○○周期 で取って判定に使ったのであろう.Upconv はこの NR 処理がハイレゾ音源製作者より優れているのであろう.ただし,‘(1000Hz以上)’という断り書きを外して 100Hz にしたのは私の貢献です.
サーという感じのノイズを削減します。周波数毎に鳴ろうとしている音かを判定し、一定期間以上出ている音を残して、残りはカットします。音質に影響します。ボーカル等の声は残りますがノイズに近い、かさかさした音はかなり削減されてしまいます。
NR Levelで強さを指定できます。
ハイレゾ音源については,持ち合わせている数もそう多くなく,また自分の聴力にもそれほどの自信はありません.そこで,皆さんが実験・検証した結果を ハイレゾ/アップコンバート 情報掲示板 で発表され,意見交換されることを期待します.
もし タイプ1,2,3,4 ならその旨を記し,別のタイプなら WaveSpectra のスペクトル表示の様子(特に Peak) を記していただけると助かります.また,Hearing Test HD 等で聴力を測り,それを記していただけると非常に参考になります.また,クラッシック音楽は強い音・弱い音が入り交じり,ハイレゾ音源のテストにはうってつけです.クラッシック愛好家の皆様,よろしくお願いいたします.また,CD よりアナログレコードを好む方も多くなってきたと聞いております.それらの方の感想もお待ちしております.※ 著作権の関係上,アップコンバートしたファイルなどを 情報掲示板 には決して載せないでください.
なお,ハイレゾ音源の中身を調べもせずに礼賛し,アップコンバートをちょっと囓った程度で,知ったか振りをする疑似情報サイトもあるようです.何事も,中身をしっかり調べ,きちっと技術をマスターし,慎重にことを進めて正しい結論を導きましょう.
追記(2017/07/18):インターネットで「ハイレゾ」を調べてみると,賛否両論の評価が飛び交い,ハイレゾ初心者はどれを信頼してよいのか分からなくなると思う.単にハイレゾ音源を賞賛/毛嫌いするもの,ハイレゾ(=高音質)の意味を ‘サンプリング周波数(Hz) ’を高くすることと勘違いしている者が何と多いことか.単なる推測だけの議論,結論が先にあって論理の体を成さない主張等も目立ちます.ハイレゾの音響環境にはないのにハイレゾについて云々している,と疑われるサイトも少なからずあるように見受けられます.特に注意すべきは,業界の回し者と思われるブロガーがかなりいることです(ハイレゾ音源に対して批判を一切加えず,酷いのになると,高額の機器を買わせようとしたりするので,直ぐ分かります).ハイレゾ音源について云々しながら,それについて自分自身で聴いてみた結果を何ら述べないようなサイトは全く信用できません.
実際の評価は,上の議論で行ったように,あなた自身で行わないとならないが,私が,音響理論に従ってことを進め,かつ実際に聴いてみた実験結果 を以下に纏めておきます:
1.CD 音質(44.1kHz/16bit)に対して,サンプリング周波数44.1kHz (22.05kHz の音) 以上を聞き分けられる人は(特殊な聴能力者を除いて)殆どいない.追記(2017/08/01):ハイレゾや可聴上限周波数などを議論しているサイトでは,可聴上限周波数と年齢の関係を統計を取って議論している(→右図).子供は超音波が聞こえるのネ.大人では,極々例外的な人を除けば,サンプリング周波数48kHz (24kHz の音) で十分である.
2.量子化ビット数(bit) (=音の滑らかさ) については,多くの人が 16bit と 24bit の違いを聞き分けられる.したがって,ハイレゾの本質は量子化ビット数 24bit にある.追記(2017/08/01):You Tube の レコード、CD、ハイレゾ音源、音質比較 にあるコメントによると,レコードの評判がすこぶるよい.確かに,レコード音の量子化ビット数は ∞ bit のハイレゾ音に違いない ランダム/不定 bit 音のようだ(※ まもなく,ブログをアップロードする予定).この観点から,レコードについて調べてみる価値は十分にありそうだ.
3.昔の曲のリマスター音源については,良い音で聴くために,ヒスノイズ の除去が不可欠である.
結論:ハイレゾ音源に必要十分な条件は,聴能力者にも応えられる 48kHz で,実音(=歌声/楽器の音)が 24bit 全体に振り分けられ,またヒスノイズが入らないもの,つまり,ノイズ無しの 48kHz/24bit である.そして,聴力が2万Hz 以下の(私を含む)普通の人には,ノイズ無しの 44.1kHz/24bit で十分である.